わたしは、ひとりの仲間について語った。彼は収容所に入ってまもないころ、天と契約を結んだ。つまり、自分が苦しみ、死ぬなら、代わりに愛する人間には苦しみに満ちた死をまぬがれさせてほしい、と願ったのだ。この男にとって苦しむことも死ぬことも意味のないものではなく、犠牲としてのこよなく深い意味に満たされていた。
(出典:夜と霧 V・E・フランクル)
これは苦しみや辛さを誰かの幸せのためと言い換えることで自分の絶望に意味をもたせています。私達はいつまで走ればいいのかわからないマラソンをさせられるとその労力以上に疲れを感じてしまいますが、30分や校庭3周などの目標があることでそこへむけて力を発揮することができるのです。
こうした一見するとネガティブな現状も、言い換えることでポジティブな状態に変えられることを心理学ではリフレーミングといいます。よくスポーツの世界でピンチは色んな人から注目を浴びるチャンス、などと言って選手を鼓舞する場面がありますよね。これはまさにリフレーミングそのもの。
つまり、この効果は絶望という過去を突きつけ続ける存在に対して、希望をを見いだし未来へ突き進めるようにできることなのです。
「あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない」
(出典:夜と霧 V・E・フランクル)
私達の今は過去の積み重ねで出来上がっています。その過去は誰かから褒められたことや何かで成功したことかもしれません。一方では失敗してとても恥ずかしい思いをしたり、誰かに傷つけられたりしたこともあるでしょう。これらの一つ一つはあなたの今の姿を確かに支えています。
未来はいくらでも変えることはでき、過去は変えることができません。裏返すと、あなたが積み重ねてきた過去は誰にも傷つけることはできません。なくなることもなくそこにただ存在します。
成功や嬉しさとともに、失敗や苦しさもあなたのかけがえのない経験。つまり、あなたの存在はこの成功や嬉しさだけではなく失敗や苦しさにも支えられているのです。
希望をもつことで変わる視点
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強制収容所に収監されている間、著者のフランクルを支えたのは同じく別の強制収容所に収容された妻の存在でした。どこにいるのか、生きているのかそれさえもわからない中、彼は彼女との幸せな日々を思い過酷な生活を耐えます。さらに彼は自分の生存のためだけではなく、絶望に落ちる人々に言葉をかけ続けなんとか希望を持てるように働きかけ続けました。
これは、妻との日々やこれまでの生活という明るい過去を決して離さずに持ち続けることで、そこに向かってどうすればいいのか、あの人はどんな気持ちなのか、と常に考え行動に移すことができたのです。