自律存在(自律性)に伴うスピリチュアルペイン
自律存在のスピリチュアルペインは、自己決定権の消失に伴う苦痛だと考えられています。病気や怪我により体が不自由になると、自分のことが自分でできない・決められないという苦痛に苛まれてしまうのです。自分で自分をコントロールできないという自由のなさに絶望してしまう人も少なくありません。
また自分が役割を失うことで、世界に必要のない存在だと感じる場合もあります。今まで通り家事や仕事ができなくなることで、自分の存在意義を失ってしまうという悲しみです。普段から自分の存在意義や生産性について考えることが多かった人は、特にこのスピリチュアルペインに悩まされることが多いでしょう。
スピリチュアルペインの具体例
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スピリチュアルペインは3つの存在の消失や、複雑感情によって生じます。出所はさまざまですが、その症状にはある程度の共通点があるのです。身体的にも精神的にも多様な症状が出るため、患者は病や怪我に加えてそれらの症状にも悩まされてしまいます。もちろん個人差や特殊な症状が出ることもありますが、一般的に現れやすい精神的苦痛による症状が共通して出ることが多いでしょう。
スピリチュアルペインは実際に身体的症状として現れるわけではありません。しかし、その精神的な苦痛によってさまざまな身体的症状が引き起こされることがあります。心のストレスが大きくなり、病状や薬の副作用以外の不快な症状を実感しやすくなってしまうのです。
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スピリチュアルペインの具体例一覧
- 不眠
- 疼痛
- うつ
- 錯乱
- 焦燥感
- 脱力感
- 不快感
- 苛立ち
- 呼吸困難
- 食欲不振
- 意識の混濁
スピリチュアルペインのケア・看護計画とは
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スピリチュアルペインは、病気や怪我の治療と共にしっかりケアしなくてはならない苦痛です。特に有効とされているケア・看護はラナティブなもので、『がん哲学』の外来では医師と患者が話し合う方式で治療が進められます。医師や医療者が時間をかけて患者の話を傾聴し、語り合う時間を確保することが大切です。
またこのケアや看護には、心理士や宗教家ではなく「治療に精通した医師」が適任だとされています。精神的な話をする中で病気や怪我の話題に話が及ぶことが多く、心理士や宗教家では対応できないのです。家族や友人、恋人が話を聞いてケアすることももちろん大切ですが、周囲は専門家の力をかりてスピリチュアルペインに立ち向かうことも大切であるとを意識してください。
患者家族にもスピリチュアルペインが生じる?
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怪我や病気でスピリチュアルペインを抱えた患者家族にも、スピリチュアルペインは生じると考えられています。患者家族・友人・恋人などは、患者の弱っていく姿や命の終わりゆく姿に強い苦痛を感じるのです。その姿を目の当たりにしても自分は何もできない、力になれない、という気持ちで自分を責めてしまう人も少なくありません。
この場合は、患者家族・友人・恋人もカウンセラーや心理士のケアを受けるのがおすすめです。自分がどのように患者と向き合えば良いか、自分の心をどう立て直せば良いかなどを相談できます。後悔や自責で自分を傷つけてしまう前に、しっかり自分のケアも行いましょう。
スピリチュアルペインは国試にも登場する?
スピリチュアルペインは、看護師国家試験にも登場する重要な問題です。『全人的苦痛』の1つとして重要視されており、緩和医療では特に深く学ばれています。全人的苦痛には身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルペインは含まれ、多くの医療関係者はスピリチュアルペインについての知識を持っているのです。