原因1.自尊心が低い
大きな原因となっているのが自尊心の低さです。自尊心とは「自分はありのままで価値がある」という肯定感と「自分は人の役に立てる」という自信から成り立っています。
しかし幼少期の家庭環境やいじめなどで自尊心が傷ついてしまうと、こうした自己肯定感や自信を持つことができず強い劣等感を抱いてしまうのです。そして「自分は人より劣っている」という感覚から逃れるために人の役に立とうとします。「自分は人を救っている」「自分は人から感謝される人間だ」という感覚を得ることで、欠けてしまった自尊心を補おうとするのです。
原因2.自分を不幸だと思いたくない
「自分は不幸だ」という感情を抑圧していることも原因のひとつと考えられています。虐待やいじめなどで自尊心が傷つき劣等感を抱いていたとしても、自分は不幸ではなく幸せな人間なのだと思い込もうとするのです。しかしこの幸福感は人を助けることでしか得られません。そのため困っている人を常に探してしまうのです。
また「助けてほしい」「救われたい」という感情を抑圧している場合は、自身と同じ問題で悩んでいたり苦しんでいたりする人を放っておけません。自分が救われなかったかわりに目の前の人を助けようと考えるのです。
メサイアコンプレックスの問題点2つ
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メサイアコンプレックスの人は積極的に困っている人を助けるため、周囲から好意的に受け止められることもあります。例えば助けを求めている人からすれば「親身に寄り添ってくれる優しい人」という印象になるでしょう。
ときにありがた迷惑と捉えられたとしても、ボランティア活動などで人の役に立っているのであればさほど問題はないように思えるかもしれません。しかし実際には問題点を抱えています。メサイアコンプレックスのどういった点が問題となるのか見ていきましょう。
問題点1.メサイアコンプレックスだという自覚がない
ひとつめの問題点はメサイアコンプレックスだという自覚がないことです。これはメサイアコンプレックスだけではなく他のコンプレックスにおいても共通しています。
コンプレックスとは心理学者のユングが提唱した言葉です。日本では劣等感と同じ意味で使われることもありますが、ユングの定義ではコンプレックスは無意識の中に存在するとされており「意識的に受け入れがたい記憶や感情の集合体」を指します。
つまり過去のつらい記憶や悲しみ・苦しみといった感情の集合体であるため問題を直視することが難しく、自覚できずにいる場合が多いのです。メサイアコンプレックスと向き合うためには他者の協力が必要となるでしょう。
問題点2.共依存に陥る危険性がある
メサイアコンプレックスが持つ「人を救いたい」という気持ちと、他者の「助けてほしい」という気持ちが噛みあえば良好な関係性を築けることもあります。しかしその関係性が長期化した場合は注意が必要です。
お互いが相手に対し過剰に依存してしまいその関係性にとらわれてしまうことがあります。いわゆる共依存の関係に陥る危険性があるのです。このような依存関係はお互いの根本的な問題を解決することはできませんし、問題解決の機会を失ってしまう恐れもあります。
そうなる前に周囲がメサイアコンプレックスの人に対し自覚を促すか、助けを求めている側の自立を促すなど何らかのサポートが必要になるでしょう。
根本的な解決のためには周囲のサポートが必要不可欠
今回の記事ではメサイアコンプレックスの特徴や原因などについて解説いたしました。気付いていないだけで人は誰しもコンプレックスを抱いていると言われています。そのため無理に克服しなければならないというわけではありませんが、メサイアコンプレックスがその人にとって大きな問題となるようであれば改善する努力も必要となるでしょう。
根本的な解決のためには周囲のサポートが必要不可欠です。もし今回の記事を読んで「自分に当てはまる部分がある…」と思った方は、苦しい作業であっても自分自身と向き合ってみてください。また身近な人に特徴が当てはまると思った方は、メサイアコンプレックスという存在を教えてあげるとその人が問題と向き合うきっかけになるかもしれません。
自分自身や周囲の人のサポートだけでは解決できない場合、カウンセラーなどの専門知識を持っている人を頼るのもよいでしょう。心の歪みに支配されず、自分自身の人生を歩んでいけるよう応援しております。