扇が縁起物として捉えられない場合もある
日本では古来より神聖で縁起の良いものとされている扇ですが、他の文化や使用する状況によっては縁起物として捉えられないこともしばしば。特に扇の発祥の地であるとされている中国では、友人や家族に扇を送ることは縁起が悪いとされています。これは扇を表す中国語の発音に由来するもので、扇を表す言葉が「解散」を表す言葉と酷似しているおり、人の縁を散らしてしまう意味合いを持っていると考えられているためです。
また、縁起が良いとされている扇の末広がりの形も、結婚式では縁起が悪いとされています。末広がりの形は結ばれたばかりの新郎新婦の仲を離してしまうと考えられているのです。そのため、日本でも扇を結婚式などでプレンゼントした、新婚の方に贈ったりすることは避けられています。
扇の種類とその意味
縁起が良くめでたい印象のある扇には用途や意味合いが異なる種類が展開されており、その数は豊富です。ここからは、そんな種類別の扇を詳しく紹介していきます。
舞扇子:主に伝統芸能で使う扇
舞扇子は、その名の通り舞に使われる扇です。日本舞踊や能に使われる伝統芸能用の扇で、霧や水などの抽象的で華やかな柄を採用している種類が多く展開されています。比較的大きめで、骨組みには鉛を埋め込んだ丈夫な竹を使うことが多いそうです。上品な美しさがあり見栄えが良いため、インテリとしても活躍します。
夏扇子:涼をとるための扇
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小ぶりで片手で風を簡単におこせる、一番身近で庶民的な扇です。扇と聞いてまず頭に思い浮かべることの多い一般的な扇と言えます。名前に「夏」と入っているので暑い夏季だけに使われる扇のように思われがちですが、実際は一年中使用可能です。種類が多くプレゼントにも向いており、誰でも気軽に購入できます。
祝儀扇:祝い事の席で使われる扇
冠婚葬祭で使われる祝儀扇は、それぞれの式に参加する際に持つ礼装用の扇です。実用的な扇ではなく縁起物として身に纏う物なので、他の扇と比べて決まりが多く、持つ時には少々注意が必要。持ち手の性別によって種類が異なったり、出席する式によって選ぶべき種類が異なったりします。
檜扇:宮中で使われていた扇
檜扇は紙ではなく、薄板を合わせて作られた特徴的な扇です。細い檜の薄板を糸で編み、上品に仕上げられたスタイルが一般的。特に女性が使う種類は「衵扇(あこめおうぎ)」と呼ばれ、古来から主に位の高い女性が宮中で使っていました。一般的な扇よりも高級感があるため、特別な贈り物や持ち物として好まれます。
飾り扇子:験担ぎやお祝いで飾られる扇
扇子立てにおいて飾る、観賞用の扇です。縁起の良い柄や配色を採用しており、飾ることで験担ぎをしたり、祝いの席を華やかにする縁起物として活躍します。主に玄関や居間の目立つ所に飾られ、古来から親しまれてきました。季節や行事に合わせた柄のものをいくつか購入すれば、四季に合わせて、または祭事や行事に合わせて楽しめるのも魅力です。