黄泉戸喫とは
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黄泉戸喫(よもつへぐい)とは、古くから存在する言葉で、黄泉の国の食べ物を食べるという意味。黄泉戸喫の漢字自体もその行為を表しており、戸がかまどを、喫が口が腹を通して食べるという行為を象徴していますよ。黄泉戸喫は、日本の神々の神話も収録されている古事記に記載されている言葉で、イザナミとイザナギにまつわる「黄泉の国へ」という話の中に出てくるのが始まりです。
古事記から黄泉戸喫が世に浸透し、後には数々の作品に用いられるようにもなりました。現代でいうなれば、スタジオジブリが手がけた千と千尋の神隠しがよい例です。千と千尋の神隠しでは、主人公千尋の両親が黄泉戸喫をしたために、豚になってしまう部分がありますよね。舞台が神々の世界でもあるので、黄泉戸喫をモデルにしたといわれています。
古事記に記載されている黄泉戸喫とは
古事記の「黄泉の国へ」に記載されている黄泉戸喫(よもつへぐい)にまつわる話はどういった内容なのか、気になりますよね。イザナギ(伊邪那岐命)の妻であるイザナミ(伊邪那美命)は、火の神カグツチを出産する際、大火傷を負ったことにより命を落とします。そのため、妻イザナミは黄泉の国へと送られてしまうことになりました。しかし、夫のイザナギは妻イナザミを忘れることができず、黄泉の国へ行くことを決心します。
イザナギは、黄泉の国で妻のイザナミと再会するものの、イザナミは黄泉戸喫(よもつへぐい)を行ったため、現世には帰れないと告げるのです。というのが、古事記に記載されている黄泉戸喫にまつわる話ですよ。
黄泉戸喫はギリシャ神話にもでてくる
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黄泉戸喫(よもつへぐい)が日本だけの文化に思えてしまいますが、海外のギリシャ神話にも黄泉戸喫を行っているシーンが描かれています。大神ゼウスと豊穣の神デメテルの娘であり、花を咲かせる女神で知られているペルセポネにまつわる話が舞台。「ペルセポネの冥界下り」という話に黄泉戸喫を思わせる内容があります。
冥界の王ハデスがペルセポネに恋をしたのがきっかけで、ハデスはペルセポネを冥界へと連れ去るのがことの始まり。母デメテルは娘を救うために全力を尽くしましたが、ペルセポネは何者かにそそのかされ、冥界にあったザクロを12粒のうち4粒食べてしまったのです。しかし、全部のザクロを食べたわけではないので、1年の内3割を冥界で過ごすようになったというお話。
黄泉戸喫の言葉の由来
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そもそもどういう背景で、黄泉戸喫(よもつへぐい)という言葉が生まれたのでしょうか。黄泉戸喫は、黄泉の国の食べ物を食べるという意味を持ちますが、古代の人が行っていた埋葬方法と強い関係があると考えられています。現代こそ、火葬の埋葬方法が主流ですが、火葬が主流になる前は、土葬が一般的な風習でした。その際、遺体と共に食べ物を一緒に埋めていたとさており、埋めた遺体が一緒に埋めた食べ物を食べるという意味を持ちます。
これは、亡くなった人が一度埋めたもの、つまりは黄泉国の食べ物を食べることにより、二度と蘇らないと考えられていたためです。蘇らないということは安らかに眠ることに繋がるので納得ですよね。このことから、黄泉戸喫という言葉が生まれたといわれます。
黄泉戸喫は過去の話?
黄泉戸喫(よもつへぐい)は実際にあった埋葬方法が由来となっていますが、過去の話ではありません。現代文化にも黄泉戸喫が色濃く残っている部分が存在します。それは、供食信仰(きょうしょくしんこう)です。供食信仰とは、同じ地域や家族の人と、コミュニティの中で同じ物を食べ一体化を図るということを意味します。
私たちの生活にはごく自然に溶け込んでいる行為であり、お正月やお盆などの大型連休に、親族が集まってご飯を食べるという行為も供食信仰の一部であると考えられていますよ。その要領と同じく、黄泉戸喫は黄泉の国で黄泉の国のものを食べることで、同じ集団の一員だと認識されるのです。現代ではあり得ない文化と思われますが、黄泉戸喫のルーツは私たちの生活にごく自然に馴染んでいます。
仏壇のお供え物を食べると黄泉戸喫になる?
黄泉戸喫(よもつへぐい)がどういったものかを知ると、仏壇のお供え物を食べることは黄泉戸喫になるのか、という疑問が思い浮かびますよね。仏壇のお供え物を食べることは、黄泉戸喫ではありません。黄泉戸喫とは、黄泉の国で黄泉の国の竃と火を使って煮炊き調理されたものを食べること。そのため、現代で調理された料理を仏壇にお供えしたのち、自分たちで食べても黄泉戸喫ではありませんので、安心してください。
寧ろ、現代では神様やご先祖様にお供えをしたものを食べることで、神様やご先祖様と親しくなれたり、エネルギーをもらえるという考えになっています。心のこもったお供え物は、お供えをした側にもよいエネルギーをわけて貰えますよ。
黄泉戸喫は治せる?
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もし仮に、黄泉戸喫(ヨモツヘグイ)をしたら治せるのか。いいえ、黄泉戸喫は治せません。古事記に記載されている「黄泉の国へ」のイザナギとイザナミの話の続きは、散々たるものなのです。夫であるイザナギが黄泉の国へ迎えに来たことで、妻のイザナミは現世に帰りたくなります。そのため、イザナミは現世に帰るために黄泉の国の者たちと話し合いをしてくるから、絶対に部屋を覗かないようにとイザナギに伝えましたが、イザナギは覗いてしまうのです。
そこには腐り果てウジがわき、肉体には8つの雷を宿していたイザナミの姿が。約束を破ったイザナギに怒り狂うイザナミは、ヨモツシコメに加え8つの雷神と1500の黄泉の軍勢と一緒に追いかけますが、結局イザナミが現世に戻ることはありませんでした。